高校数学の王道的立ち位置にいるのが『チャート式』です。
チャート式は、大正の末期、京都の地に設立された数学研究社高等予備校の講義を通じて生まれました。現在のチャート式参考書の起源ともいえる「チャート式 代数学」「チャート式 幾何学」がその出版部門である数学研究社から出版されたのは、昭和4年(1929年)のことです。
太平洋戦争の激化により、チャート式の発行は一時的に途絶えましたが、昭和27年(1952年)、現在の数研出版が誕生し、当時の教育制度に基づく数学のチャート式参考書が復活します。
チャート研究所のなりたち
調べてみたら、かなり歴史がある参考書でした。
親世代の人に「チャート式」って知ってる?って聞いてみると、「ああ〜!」みたいな反応が返ってくるほど、有名なのです。
そんなチャート式の中で最も使用されているのが『青チャート』でしょう。
チャート式は様々な色があり、レベルによって使い分けられていることは広く知られています。
今回は、現役家庭教師の立場から、チャート式のレベルや使う際に意識してほしいコツ、どの色を選ぶべきかなどを広く解説していこうと思います。
【難易度】いつ『チャート式』を使うべきか
チャート式は基本を含めた高校数学の演習書ですので、使うべきタイミングは
教科書学習と併用、または教科書レベルの学習書が終わってから
が、ちょうどいいかと思います。
入試を意識して考えると「入試基礎〜標準」といったところです。チャート式を終わらせても、最難関大学の入試数学には、まだ手も足も出ない状態だと考えておきましょう。
しかし、ここでどれ程の基礎が固められるかどうかで後々に響いていきます。
舐めてかからず、全ての問題がほとんど解けるようになる状態までもっていきたいところです。
【レベル】どの『チャート式』を使うべきか
使うなら「青チャート」か「黄チャート」がオススメ
家庭教師として教える際に、赤チャート、青チャート、黄チャートに目を通しました。そして教えている経験をもとに言わせてもらうと、
難関大学を希望しているならば『青チャート』
数学が苦手な人・独学で勉強している人は『黄チャート』
が良いと思います。難易度表を見てください。
これは数研出版(『チャート式』を作ってる会社)の難易度表ですが、個人的に変だと思う部分が2点あります。
- 共通テストの数学は甘くない。チャートの演習量では満点を狙うことは難しい。
- 青チャートで入試の上級レベルに届いていると言えるかは正直怪しい
チャート式はいわゆる「網羅系参考書」と言われるものです。入試数学で必須と言われる様々な要素を余すことなく詰め込んでいる、ということです。
あくまで、入試数学から見れば基本とされる範囲です。共通テストは、その基本を知っている前提で問題を出してきます。
応用する力をまだ身につけていない段階なので、共通テストに挑むのは厳しいでしょう。取れても7〜8割と言ったところでしょうか。
同様の理由で入試の上級レベルだとも思いません。
「赤チャート」をオススメしない理由
数学の学習にはいろいろな段階があります。
大まかに分けると「基本を吸収する段階」と「基本を応用へ変える段階」です。
赤チャートはこの2つを混同している気がして、なかなかオススメしにくいです。
どこまでが基本で覚えるべき内容なのか、どこからが応用で自身で考察するべき内容なのかが少し曖昧になってしまう恐れがあります。
赤チャートに含まれるような、「入試数学の応用」は別の参考書で鍛え上げることをオススメします。チャートの目的は、あくまでも「入試基礎を叩き込む」ことにあるのです。
【注意事項】チャート式に取り組む前に
チャート式を勉強する感覚
散々、「入試基礎」の内容だと話してきたので、「チャート式」はできて当然、簡単なものだと誤解してる人も多いかと思います。
はっきり言って、高校数学の初学者にとってかなり難しいはずです。
今まで教科書程度の問題ならば、ついて来れたという人も必ずと言っていいほど、どこかで詰まる瞬間があります。
ですが、慣れとともに段々と解けるようになってきます。そう信じて進んで欲しいです。
チャート式と同等の参考書
以下の参考書はチャート式の内容とほぼ同等ですので、どちらか好きな方を選べば良いと思います。
『Focus Gold』
私は「Focus Gold」も「青チャート」も使ったことがありますが、大差ないと思います。「Focus Gold」の方が問題数が多く、解説が丁寧と言う意見もありましたが、新課程版の「青チャート」はすでに並ぶほどのものになっています。むしろ私は「青チャート」の方がデザイン的に好きです。
【見本つき】チャート式の使い方
基本例題と重要例題
こちらはAmazonで紹介されている問題の一部です。
この問題を例にどう学習するべきか考えていきましょう。
まず1つ目にチャート式には基本例題と重要例題がありますが、
- 基本例題は指針を見て自分なりに要点をまとめる
- 重要例題は指針や解答例を見る前に既存の知識で解けないか考えてみる
ことをオススメします。
特に基本例題においては「指針」で示されている内容を、問題を解きながら覚えてください。
例えば今回だと
2次関数の最大・最初を議論するときは平方完成することが有効である
ことは必ず覚えておきましょう。
これから飽きるほど出てくるので、解答をなぞりつつ、確認することが重要です。
感覚としては基本例題は覚える、重要例題は考えるといったイメージで十分です。
もちろん、練習問題で何も見ずに再現できるかどうかを最後にチェックしてくださいね。
チャートには章末問題や巻末問題も豊富にありますが、これらは試験前の対策に使うのがちょうど良いかと思います。
何周するべきなのか
完璧にこだわりすぎないようにしましょう。
チャートは3冊終わらせれば膨大な量だと思うのでイチから復習し直すのは骨が折れます。
基本例題が体感9割解けるようになったら終了して大丈夫です。
これから、応用問題を解いていくうちに、何度もチャートで習った知識が出てくると思うのでその度に復習すれば十分だと思います。
【おわりに】チャート式の次の参考書は?
まずは、チャートで習った様々な解法を適切に選択することができるか、入試の標準となるような問題で確認してみることをオススメします。
その過程で入試によく出てくる考え方は何か確認してみましょう。
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